平手友梨奈。サイレントマジョリティー以後、 人々は時代や同世代の象徴として多くの事象を彼女に投影し続けた。 しかしその全てが必ずしも彼女の実像を正しく映し出していたのか? 数多くのアイドルのインタビューを手がけ、彼女たちの「本音」を引き出してきたライター・篠本634氏が鋭く切り込む。今「16歳の平手友梨奈」として、 率直な言葉で語った、衝撃の独占告白!
前回「『他人にこう思われたら』っていう感情は、なんにもないです」と語ったように、孤高を貫くようなその姿は多くの人々を惹きつけてきた。インタビューはいよいよ、核心に迫る。
*こちらは2018年1月1日(月)0時までの期間限定配信となります。
――多くのメディアで、「平手友梨奈は憑依型だ」と言われています。その〝憑依〟という言葉が正しいのかはわからないですけど、いわゆる“入る”という感覚はあるんですか?
平手 そうですね。でもそれは、日によったり、時によったり、雰囲気によったり、曲によったり…自分でも全然わからないんですよ。
――曲との向き合い方はどんな感じですか?
平手 歌詞を読んで、それを自分に入れていって......ってことが多いですけど、MVを撮影するときに、監督さんといろいろ話して入っていく感じが多いです。とくに新宮監督との現場がそんな感じで。新宮監督の魂がすごくて。よく「もっと行けー!」って怒鳴られたりします。とくに『不協和音』のときがすごくて。そうやって言われると ......自分にもムカつくし、監督にもムカつくし、もう撮影されていること自体も嫌になっていって。「もう、なんだっていうの!?」って気持ちになりました。......で、あんまり覚えていないんですけど、マネージャーさんに『不協和音』のMV撮影のとき、「撮影の途中で海の方へひとりで歩いて行っ ちゃうから、そのまま飛び込むのかと思って怖かったよ」って言われて。
――ええ? ? そのとき、本当に飛び込もうって思ったんですか?
平手 覚えてないんです。あとで「平手、あのときこういうことを言ってたぞ」って言われると、薄く「あぁ、言ったかも」って思い出したり、そのときにした行動をうっすら思い出せるんですけど…。だから海の方に歩いて行ったのは覚えているんです。でも、何を考えていたのかは覚えていなくて…。
――......あのー、少女漫画の名作に『ガラスの仮面』っていうお芝居の漫画があるんですけど、その主人公の「北島マヤ」みたいですね。いつもは普通の女の子なのに、お芝居に入ると別の人間になってしまう、みたいな。そんな人にリアルであったのは初めてなので……ちょっと驚いています。
平手 そうなんですね(笑)。
――北島マヤは幕が上がった瞬間に役に入るんですが、平手さんはどんな感じなんですかね。
平手 う~~ん......。
――入っているときは、平手さん自身の自我は、消えているんですか? 思考停止してるのか、それとも隣にいて俯瞰で見ている感じですか? すいません、感覚的な話になってしまって。
平手 覚えてないから......停止してるんですかね。どうやって〝入ってる〟のかは全然わからないんですけど......。あ、でも、今思ったのが、今、私服でインタビューしてるじゃないですか。そうなると、自分のステージとかやってきたことを、なんか客観的に見てしまって。今、客観的な平手友梨奈のインタビューになってるんですよ。だから、過去やってきたことをほとんど覚えてないので、「覚えてないです」ってなってしまって。でも衣装を来ていると、その曲を歌う人に〝入っている〟から......。なので、ステージの平手友梨奈の話を聞きたい場合は......
――「あ、『サイレントマジョリティー』ですね、じゃあそのときの平手を呼んで来ます!」って言って、サイマジョの衣装に着替えて戻ってくる、みたいな? ?
平手 はい。そうじゃないと応えられない気がします。私にとって衣装は大きいです。......なんか、最近ちょいちょい思ってたんですよ。どうしてもインタビューをしていただくときって、ステージのことについて聞かれることも多いじゃないですか。でも 私は覚えてないから......だったら、ステージが終わった後にインタビューしていただければ答えられると思うんですよね。
――でも、それは無理ですよね? ? 幕張の後みたいに「ヤバい」ってなってるときにインタビューなんて申し訳なくてお願いできないですよ! (笑)
マネージャー あの、すいません。さっき平手が「ヤバい」って話していましたけど、 それについて平手がツアー中に言ってたことを思い出しまして。
――なんでしょうか?
マネージャー 夏のツアーの後半のときに平手が言っていたんですが、ライブパフォーマンスってある種のエネルギーの放出じゃないですか。で、「私は、エネルギーの充電に時間がかかると思うんです。『サイマジョ』を歌ってエネルギーを出したら、 次の曲を歌うのに、また充電させて放出する。このエネルギーが溜まりきらないと放出できなくなる」って言ってたんです。
――なるほど。放電と充電が同時にできない、と。
平手 それ、言いました。一曲一曲、エネルギーを溜めて行かないとダメで。富士急ハイランドでやった『欅共和国2017』は、全部の曲のエネルギーが溜まってたんです。だから全部、良い感じにできたんです。 でも、共和国で一度全部カラになった気がしました。しかもアルバムのツアーだったので、やったことのない曲も多くて、エネルギーの溜め方がわからない感覚があって ......。でも、中途半端なパフォーマンスは すごく嫌で.....。
――普通だったら、最後までやりきるために、パワーを制限したりしますけどね。
平手 それができなくて。あとライブだと曲順とかも。ストーリーがあって全部繋がってるって思うんですけど、セットリストに、そのストーリーのつながりが見えないと、切り替えができないんです。
――......そうか。女優さんが舞台でその 世界に〝入る〟場合、一度入ってしまえば、 舞台の2時間は入ったままで大丈夫ですけど、コンサートの場合、一曲一曲が別だから、一曲ずつ切り替えて違う人間に入らなきゃいけないんですね。そして平手さんの場合、その入りっぷりが深いから、一曲が終わったら次の曲に、時間でいえば5分に1回、何度もその作業をするってことですよね。…それはエネルギー無くなりますね。
平手 ライブは本当に大変なんです。
――......そう考えると、幕張のダブルアンコールは、完全にエネルギーゼロの状態でアクセルを踏んだんですね。......壊れますよ、その車。ブレーキはないんですか?
平手 ふふふ。でも、うーんどうだろう。自分ではブレーキかけれないです。
――ハンドルは動くんですか? ギリギリのところで、ハンドルを切って、危険を回避したりはできるんですか?
平手 どうだろう……いや、曲がれないと思います。
――......いや、気をつけて下さい。ガソリンなしで走らせると、車も人も一発で傷つきますから。周りの大人がちゃんとブレーキをかけさせてほしいです。
平手 でも、毎回、マネージャーさんが止めてくれます。それは本当に助かってます。